2011年 Pride of JAPAN 石巻を終えて

「Pride of JAPAN 石巻を終えて」

           2011/09/20 雑賀日出夫

先ずは趣旨に賛同頂き実行委員として、有形無形のご支援を頂いた皆さん方に心から感謝を申し上げます。協力や石巻入りできない理由はたくさんあると思いますが、POJ石巻を最優先してくださったこと嬉しい限りです。私の感想を3点だけお伝え致します。

  1.  自己の最善を他者に尽くす
    東日本大震災という有事に、東北の皆さんが示してくださった「我慢強く秩序だった行動」を世界が称賛。それに対して、私達は大変勇気づけられ、日本人の誇りだと感じました。「無規範社会」だと思っていたこの日本に、規範が存在していたのです。私は、私の全てのネットワークを総動員して、被災された東北の皆さんを応援したい。また、この大惨事を絶対に風化させては行けない。平時から「日本人の精神性の高さ」が発現できるように発信して行きたいと思い、このプロジェクトを設立しました。

    翌週から、生活に必要な時間と仕事の時間以外は、全てPOJの準備に費やしてまいりました。毎日、朝晩の通勤時間と昼休みの時間、寝るまでの2時間を活用。テレビも新聞もネットも、この5か月間見た記憶がありません。終わってみれば、たくさんの課題が見つかりましたが、後悔することは一切ありません。自己の最善を尽くした結果、150名以上の実行委員の方が集まってくださり、岸田玲子さんを介して小川マキさんによる「きずな」という名曲が完成、原宿ライブも満席。寄付金も約300万集まり、当日も集客数を除けば、たくさんの感動的なエピソードが生まれ、私は全てのことが得られたような気がしてなりません。まさに、中国古典の「大学」がいうように、自己の最善を他者に尽くすと、最終的に全てが得られることを実感しました。

    「誰でもできることを誰もやらないくらいにやる」(浜口隆則著「戦わない経営」)という言葉があります。現代は仕事でもプライベートでも、自分に対して、たくさんのことをやるように求めています。ところが、多くの人は全部のことをやろうとして、全てが平均点以下に終わり、疲れきってしまっている人が少なくありません。一生は有限であれもこれもできません。やりたいことの中から、本当に自分が欲していることを厳選し、それを誰も真似ができないレベルまでやり切る。私は、自分の残りの人生を「日本を清く美しい流れに戻す」ことだけに捧げようと、改めて思いました。

  2. 我慢強く秩序だった行動で問題を乗り越える毎日毎日小さなことから大きなことまで様々な問題が生じました。問題が山積で、どうして良いか分からない時には、宮岡先生に「無料プロジェクト相談」をお願いしました。宮岡先生は、必ず幾つかの選択肢を示してくださり、最後は自分で決めるようにアドバイス頂きました。私の頼れる兄貴分で、実行委員の多くの方から、宮岡先生と知り合いになることができて良かったとの感想を頂きました。

    ところで、問題を挙げればきりがありません。最初は趣旨が上手く説明できず、思うように実行委員や寄付金が集まりませんでした。テーマソングをどうつくるか、ライブのチケットが売れたと思ったらキャンセルの繰り返し。実行委員同士の価値観の違い、チラシができあがらない、講演をお願いしていた人からのお断り。交通手段がない、食事や宿泊をどうするか、集客をどうするか、熱中症対策、保険の問題、科学の祭典の責任者が切れているので収束に協力してほしい等など。

    このプロジェクトは、東北の皆さんの「我慢強く秩序だった言動」に感謝することが出発点ですから、どんなことがあっても我慢する、必ず乗り越える、万一の時には、全て自分でやると覚悟を決めていました。

    私は、田口先生より、「本当に幸せになる秘訣は、自己の確立に取り組むことである。苦しいこと、辛いことよドンドン来なさい。それに負けない自分を創り上げることである」と、以前から教えて頂きました。また、親交がある浜松大学の竹村教授から「リーダーは上手く行った時は周囲のお陰だと受け止め、上手く行かなかった時は全て自分に責任があると認識して、自分ができることに集中しなさい」と言われたことを、何度も何度も肝に銘じ信念化できました。

    物事は大きくなるに従い、上手く行かないのが当たり前で、私自身を含め多くの人は、少し上手く行かないと辞めてしまったり、嫌なことがあると諦めてしまったりしますが、覚悟を決めて粘り強く取り組むと、思いがけぬ協力者が現れて乗り越えられる。準備の段階で、何度も経験することができました。特に、プログラムパンフの作成と真言密教の僧侶探しでは、途方に暮れていましたが、その都度、ヒーローのように海老澤さんが現れてくださって、大きな問題を神技のように一緒に解決してくださいました。彼女がいなければ、パンフ作成も「鎮魂のための祈り」も絶対に形にならなかったと思います。

  3.  本当の喜びと今後の展開
    食べ歩きやショッピング、映画鑑賞に旅行。どれも楽しいことだと思いますが、多くの方と思いを共有し、協力し合いながら、自己の得意分野で、他者のために最善を尽くす。人生において、これ程の充実感・創造の喜びがあったとは、この歳になるまで知りませんでした。本当の喜びは、苦しみや問題を多くの人と乗り越えたその先にあるのだと気づきました。また、多くの実行委員が自己の最善を尽くしてくださり、たくさんの「慈愛」「義愛」を見てとることができました。東北だけでなく私達自身の中に「日本人の精神性の高さ」が潜在的にあることが分かったのも大きな感動でした。更に、横田真吾君や金井麻衣子さんのワークショップを拝見し、講演と歌や演劇のワークショップのコラボにより、短時間での効果的な教育の可能性をとても感じました。現代版「規範教育」の在るべき姿が見えてきたように思います。ITなどを駆使すれば更に効果は高くなることでしょう。

    最後に、今後の展開ですが、年一回の応援プロジェクトとは別に、半日程度のミニプロジェクト開催を検討。そして、平時から「日本人の精神性の高さ」が発現できるように、「規範教育」プログラムの構築に取り組んで行く決意です。明日からお互いそれぞれの分野で、一隅を照らして、再会の際は、成長した姿を見せられるようにしましょう。

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